不動産特定共同事業法の概要や施行の背景、事業参入に必要な免許取得について解説します。
不動産クラウドファンディングを始めるにあたり、知っておきたいのが不動産特定共同事業法についてです。過去3度にわたり法改正した不動産特定共同事業法ですが、改正により小規模事業者でも不動産クラウドファンディングに参入しやすくなりました。
本記事では、不動産特定共同事業法の概要や施行の背景、事業参入に必要な免許取得について解説します。
目次
不動産特定共同事業法とは?概要や制定の背景
不動産特定事業法とは、事業者の不動産特定事業が適正におこなわれ、投資家の利益を保護することを目的に施行された法律です。ここでいう不動産特定共同事業は、匿名組合契約や任意組合契約を通じて複数の投資家から出資を募り、得られた利益を運用・分配する不動産クラウドファンディングを指します。
不動産特定事業法の概要を知るために、法律が施行されるに至った背景を紹介します。
不動産特定事業評法が制定されるより前の1980年ごろ、不動産小口化商品の販売が急増しました。しかし、1991年のバブル崩壊により経営基盤の脆弱な事業者が相次いで倒産し、多くの投資家が甚大な損失を被ることになりました。こうした背景から、投資家を保護するために法規制する必要性が高まり、法定されたのです。
不動産特定事業法が施行された今、不動産特定事業を運営するためには国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要です。許可制度を設けることで、事業者は健全な事業運営が求められるようになり、投資家の利益保護につながっています。
また、不動産特定共同事業法は3度の法改正により、さまざまな社会問題の解決に寄与しています。そのなかの一つが、近年社会問題となっている空き家問題です。
地方には、利用されないまま放置されている空き家や空き店舗がたくさんありますが、活用するにもリフォームなど多額な費用が必要です。そこで2017年、不動産特定共同事業法の改正により「小規模不動産特定共同事業」が創設され、第三の投資家から資金調達ができる仕組みが作られました。
不動産特定共同事業法のもと第三者の投資家が資金を投じることで、これまで資金が調達しづらかった地方の物件にも目が向くようになり、今後ますますの発展が期待されています。
不動産特定共同事業法に基づく事業者の種類を紹介
不動産特定共同事業をおこなう事業主は、事業内容や許可に必要な出資額に応じて以下4つの種別に分かれます。
第1号事業者
不動産特定共同事業契約を締結し、契約に基づいた運営により投資家から資金を集め、自ら保有している不動産を運用し直接利益を分配している事業者を指します。認可に必要な出資額は1億円です。
第2号事業者
不動産特定共同事業契約の締結を代行もしくは媒介し、第1号事業者のために投資家から資金を集める事業者を指します。投資家は投資持分に応じた配当を受けることができ、資金集めに関しては不動産クラウドファンディングが活用されています。認可に必要な出資額は1,000万円です。
第3号事業者
特例事業者(SPC)※からの委託で、不動産特定共同事業契約に基づき運営し、不動産取引業務をおこなう事業者です。投資家は出資持分に応じた配当を受けますが、出資持分は有価証券に該当するとみなされるため、金融商品取引法の規制を受けます。また、一定の規模を超える宅地の造成や建物の建築工事などをおこなう場合は、プロの投資家(特例投資家)に限定されます。認可に必要な出資額は5,000万円です。
※特例事業者(SPC):ファンド会社のために設立される特別目的会社
第4号事業者
不動産特定共同事業契約の締結を特例事業者に代わっておこなう事業者です。不動産特定共同事業法と金融商品取引法の規制のもと、国土交通省と金融庁により管轄されています。事業許可を得るには、第二種金融商品取引業の登録が必要です。認可には1,000万円の出資額が必要になります。
不動産特定共同事業法改正のポイント
不動産特定共同事業法が施行された当初、さまざまな要件や制約によって不動産特定共同事業に参入できる事業者が限られていました。そこで2013年、2017年、2019年の3回に渡り不動産特定共同事業法の一部を改正し、参入事業者の要件緩和などが図られることになります。法改正を繰り返したことで、現在では個人投資家がより参入しやすい環境となりました。
そこで、過去3回の法改正についてそれぞれのポイントを詳しく解説していきます。
2013年の不動産特定共同事業法改正のポイント
2013年の法改正では、特別目的会社を活用した倒産隔離型の事業を実現する特例事業の制度が導入された点が特徴です。結果として、特例事業者は不動産特定共同事業の許可がなくても一定事項の届出だけで不動産特定共同事業に参入できるようになりました。
ところが、法改正しても税制面や制度面での課題が解決したわけではありません。そこで、2017年と2019年にさらなる改正をおこなうこととなります。
2017年の不動産特定共同事業法改正のポイント
2017年の法改正では、制度面の課題を解決して特例事業者が参入しやすくなるように規制が緩和されました。特例事業者の範囲を広げることで、中小企業でも特例事業者として参入できるようになった点が特徴です。そして、不動産クラウドファンディングに適した環境整備がおこなわれました。
不動産クラウドファンディングに適した環境整備の主たるものは、以下のとおりです。
- インターネットで資金集めをする事業者に対し、必要な業務管理体制に関する規定を整備
- 投資家に交付する契約締結前の書面など、インターネット上での手続きに関する規定を整備
2019年の不動産特定共同事業法改正のポイント
2019年の法改正では、不動産クラウドファンディングのさらなる活性化を目的として、不動産特定共同事業に関する以下5つの施策が盛り込まれました。
- 不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインの策定
- 施行規則の改正
- 不動産特定共同事業への新設法人の参入要件の明確化
- 不動産流通税の特例措置の延長・拡充
- 特例事業者の宅建保証協会への加入を認可
健全で適正な取引環境が整ったことで事業者側のメリットも大きく、投資家側にとっても長期の安定した資産運用が可能になりました。
さらに、新設法人であっても不動産特定共同事業の許可がスムーズに得られやすく、早期事業化もできるようになりました。
3度の法改正による現代の不動産特定共同事業
法改正によるポイントについては解説したとおりですが、耳慣れない言葉も多く具体的にどう発展したのかがイメージしづらい人も多いでしょう。そこで、2019年の法改正により発展した現代の不動産特定共同事業について特徴をまとめました。
投資家の利益の保護が強化された
不動産特定共同事業法の電子取引ガイドラインが策定されたことで、ホームページなどで電子取引をおこなう事業者に対し、守るべきルールが明確化しました。
たとえば、顧客情報の漏洩や顧客財産の流出などを防ぐための体制の整備や、事業計画内容の精査、資金用途などの審査の実施、クーリングオフ制度の設定など、投資家の利益保護が強化されています。
今後の投資商品の提供・充実が期待できる
対象不動産変更型契約において不動産が売却された後の金銭の運用方法が柔軟化されたことで、投資家個人の資産形成を促進するほか、投資家保護が図られた投資商品の提供・充実が期待されます。
資産を入れ替えながら長期的かつ安定した運用ができる対象不動産変更型契約と個人に投資に適する不動産クラウドファンディングを組み合わせることも可能です。
新商品開発の可能性が出てきた
従来の規則では、不動産特定共同事業の許可を得るために直前3期分の計算書類の提出が必要でした。これにより設立3年未満の法人にとって許可がおりにくいデメリットが存在していましたが、法改正により新設法人であっても不動産特定共同事業の許可がおりやすくなりました。
不動産特定共同事業への参入事業者が増えれば増えるほど、事業が活性化して新しい投資商品の提供が始まることが期待されます。
法改正で契約書面の交付や手続きが完全オンラインに
不動産クラウドファンディングの拡充を目的に電子取引業務の規約が改正された今、契約書面の交付や手続きがオンラインで完結するようになりました。最初のランニングコストはかかるものの、商品数や投資家の数が増えた場合に運営システムで一括管理ができるため、将来的に効率よく事業運営がおこなえるようになります。
不動産特定共同事業法の免許を取得する要件
冒頭で伝えたように、不動産特定共同事業は許可制度となっているため、不動産特定共同事業法の定める条件を満たしたうえで免許を取得しなければなりません。
特に2019年の法令改正により、不動産特定共同事業の参入に際し資本金の準備と宅地建物取引業の免許、さらに国土交通省が定める資格要件を満たす必要があります。具体的な資格要件については下記のとおりです。
- 資本金が必要額満たされていること
- 宅地建物取引業者免許を取得していること
- 財産的基礎のもと適切に運営できる人的構成があること
- 不動産特定共同事業契約約款の内容が基準を満たしていること
- 各事務所に業務管理者を配置していること
十分な財産的基盤を確保するため、事業者の種別ごとに定められた資本金を用意する必要があります。前述の通り、第一号事業者の場合は1億円ですがあくまでこれは「最低額」なので注意が必要です。登録後に減資などで資本金要件を満たなくなった場合には、登録取消になります。
また適正な業務運営ができるよう、人材の確保や人員配置、法令遵守の体制を整えることが必要です。また、申請法人の役員がその法人以外の常務に従事、または事業を営んでいる場合においては、申請法人の不動産特定共同事業の事業遂行に支障を及ぼすおそれがないことも要件となります。
そして投資家に対する勧誘や契約内容の説明など、業務の適切な遂行を担保するために各事務所に最低1名の業務管理者を設置しなくてはなりません。業務管理者は、不動産特定共同事業に必要な助言や指導、監督管理をおこないます。
不動産特定共同事業法による不動産クラウドファンディング
不動産特定事業法に基づいた不動産クラウドファンディングとは、不動産を対象に少額資金で投資できる一つの資産運用です。これまでの直接投資や間接投資とは異なり、インターネット上の手続きで不動産に投資でき、高度な不動産の知識がなくても運用・管理を任せられます。
不動産クラウドファンディングへの投資では、キャピタルゲインとインカムゲインのいずれを重視するかで利回りが変わります。キャピタルゲインは、投資家から集めた資金を元手に個人へ高値で売買したり、会社側が物件を仕入れて別の会社に売却したりすることで発生した売却益のことです。キャピタルゲインを重視していれば、変動が激しくリスクが高くなる反面、大きなリターンを狙うことが可能です。
他方、インカムゲインはマンションや一戸建てなどの賃料収入のことです。インカムゲインを重視していれば、中長期的な運用がメインとなるため、利回りが低くなりやすく安定した収益が期待されます。
不動産物件の状況などに合わせて、どちらを重視している不動産クラウドファンディングなのかを確認しましょう。
不動産クラウドファンディングは、現物不動産投資と違って1万円から投資できる事業者が多く、少額投資が可能な点が魅力といえます。投資すれば、あとは分配金を待つだけという手軽さから、投資初心者からの注目度も高まっています。
まとめ
不動産特定共同事業法の策定やこれまでの改正により、不動産投資がより身近な存在となりました。現物不動産投資ではなく、不動産クラウドファンディングという形で投資すれば、少額かつリスクの少ない安定した資産運用が実現します。
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