不動産投資で節税できるのか、仕組みや計算方法などを解説します。また、節税効果を期待して不動産投資を始めるときの注意点についても解説します
投資について調べていると、不動産投資は節税効果があることを知り、興味を持っている方も多いでしょう。
しかし、
「本当に不動産投資で節税効果が期待できるの?」
「どのような仕組みで節税になるの?」
など、さまざまな疑問が浮かぶのではないでしょうか。
今回は、不動産投資で節税できるのか、仕組みや計算方法などを解説します。また、節税効果を期待して不動産投資を始めるときの注意点についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産投資で節税できる?
不動産投資をすることで、場合によっては節税が可能です。
たとえば、減価償却や損益通算の仕組みを使って住民税や所得税、法人税を節税できます。また、相続税や贈与税の節税につながるケースもあり、不動産投資によって複数の節税対策が可能です。
不動産投資で減らせる税金
不動産投資が節税対策になると聞くものの、実際にどのような税金を軽減できるのでしょうか。
不動産投資で減らせる税金は以下の5つです。
- 所得税
- 住民税
- 贈与税
- 相続税
- 法人税
ここでは、それぞれのどのような税金なのか、算出方法などについて解説します。
所得税
所得税とは、1月1日から12月31日までの1年間の収入から、経費や所得控除額を差し引いた所得金額に対してかかる税金です。
所得税の税率は、課税対象となる所得金額によって変わり、以下のとおり所得金額が高くなるほど税率が高くなります。
所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
所得税の算出方法は「課税所得金額 × 税率-控除額」です。所得が高くなるほど控除額が大きくなりますが、一方で税率も高くなるため負担額が増えます。
ただし、後ほど詳しく解説しますが、不動産投資による所得金額が赤字の場合、会社員の給与所得と不動産投資の損失を相殺することで、課税対象となる所得金額を減らして所得税を減らせます。
住民税
住民税とは、地方税の一種であり、都道府県が課税する「都道府県民税」と市区町村が課税する「市町村民税」の総称です。住民税は、教育・福祉サービスやゴミ処理など、地方自治体が提供するサービスにかかるお金をまかなうものです。
住民税の納付額は、前年の所得に対して課税される「所得割」と、定額で課税される「均等割の負担額」をプラスした額となります。
【住民税の所得割と均等割】
所得割による税額:前年の所得 × 10%(道府県民税・都民税4%+区市町村民税6%)
均等割の負担額:4,000円(2014~2023年の間は5,000円)
均等割の負担額は一律ですが、所得割の金額は所得に応じて変わるため、所得が高いほど納付額が増えます。
ただ、住民税も所得税と同様に、不動産投資の赤字を会社員の給与所得と相殺でき、結果的に納付額が少なくなるという節税対策が可能です。こちらの節税の仕組みについては、次章で詳しく解説します。
贈与税
贈与税は、個人から財産の贈与を受けたときにかかる税金のことで、「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つがあります。
- 暦年課税:毎年110万円以内の金額を無税で贈与できる
- 相続時精算課税:一時期に2,500万円以内の金額を贈与税を納めずに贈与できる
「暦年課税」と「相続時精算課税」は選択制となっています。しかし、相続時精算課税を利用するには、贈与者が贈与をした年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母であること、受贈者は18歳以上の子どもまたは孫であるという条件を満たさなけれなありません。
相続時精算課税は累計2,500万円まで非課税となり、2,500万円を超える金額については一律20%が贈与税となります。
一方、暦年課税は基礎控除の110万円を超える金額に対して税金がかかり、「特例税率」と「一般税率」の2種類の税率があります。以下のとおり、贈与される金額と、贈与者が誰かによって変わります。
【特例贈与財産の税率(特例税率):直系尊属からの贈与】
基礎控除後の金額 | 税率 | 基礎控除額 |
200万円以下 | 10% | ー |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超え | 55% | 640万円 |
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
【一般贈与財産の税率(一般税率):直系尊属以外からの贈与】
基礎控除後の金額 | 税率 | 基礎控除額 |
200万円以下 | 10% | ー |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超え | 55% | 400万円 |
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
なお、「暦年課税」と「相続時精算課税」のどちらの方法で贈与するにしても、現金で贈与するより、不動産として贈与するほうが節税になります。というのも、現金で相続する場合は、もらった金額に対してそのまま贈与税が算出されますが、不動産を贈与する場合は評価額に対して贈与税が算出されるからです。
相続税
不動産投資は、相続税の節税にもなります。
相続税とは、故人から相続または遺贈によって遺産をもらった方が、遺産の評価額に応じて支払う税金のことです。
【相続税の基本の計算方法】
- 基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
- 課税遺産総額=全ての財産額-基礎控除額
- 相続税額=課税遺産総額 × 法定相続分 × 税率 – 控除額
相続税は、基礎控除額を超える財産に対して課税されることがポイントです。たとえば、法定相続人が3名の場合、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3)=4,800万円」となるため、4,800万円を超える財産が課税対象となります。
また、課税遺産総額を計算する際、相続する財産によって評価額が変わります。たとえば、現金は金額がそのまま反映されるため、1億円を現金で相続する場合、相続税の課税評価額は1億円になります。一方、土地や建物として1億円を相続する場合、相続税の課税評価額は実税価格の70〜80%が計算対象となります。
つまり、同じ1億円を相続する場合でも、現金よりも不動産として相続するほうが、相続税を抑えやすいのです。
法人税
法人税とは、法人の企業活動により得られる所得に対して課される税金のことです。
法人税の税額は、以下の計算式で算出できます。
- 法人税額= 課税所得金額 × 法人税率
なお、法人税を計算するときに用いられる課税所得金額は、利益とは異なります。利益は「収益-費用」で算出する一方、所得は「益金-損金」によって算出されます。利益と所得を区別しましょう。
次に、法人税率は資本金や課税所得の額によって税率が変わります。
たとえば、普通法人の税率は年間課税所得が800万円以下の部分については税率15%(適用除外事業者は19%)、年間課税所得が800万円超の部分については税率23.20%となっています。
法人で不動産投資を行うと、減価償却費を計上して法人の課税所得を減らせるため、節税効果を得られます。
不動産投資で節税できる仕組み
不動産投資を行うことで、所得税や住民税、法人税などさまざまな税金の節税効果が期待できます。
では、具体的にどのような仕組みで節税になるのか見ていきましょう。
減価償却による節税
不動産投資では、減価償却によって住民税や所得税、法人税を節税できます。
減価償却とは、償却資産(不動産)を取得した際の購入金額を一定年数で割り、毎年の経費として計上するための会計処理を指します。
たとえば、5,000万円で不動産を購入した場合、購入代金のすべてを購入年の経費として計上するのではなく、不動産を購入した日から耐用年数を迎えるまでの年数に分けて計上していきます。
建物の種類 | 構造・用途 | 耐用年数 |
一戸建て | 木造・合成樹脂造のもの・住宅用 | 22年 |
マンション | 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの・住宅用 | 47年 |
木造アパート | 木造モルタル造のもの・住宅用 | 20年 |
参考:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」
なお、上の表のとおり減価償却費を計算する際に用いられる建物の耐用年数は、建物の種類や構造、用途などによって決められています。
購入金額や耐用年数に応じて少しずつ経費計上ができれば、長期にわたって本来の所得金額よりも少なく申告できるのです。そのため、所得金額に応じて算出される所得税や住民税、法人税に対して、長期間の節税効果を得られます。
損益通算による節税
不動産投資では、減価償却による節税のほか、損益通算によって所得税や住民税、法人税を節税できます。
不動産投資における損益通算とは、不動産投資による収支状況が赤字となった場合、本業の給与所得などの収入から、損失分を差し引いて所得金額を算出できる仕組みのことです。
- 不動産投資以外の収入から差し引く赤字額 = 家賃収入 – 必要経費
たとえば、年間の家賃収入が800万円あり、減価償却費が700万円、そのほか修繕費や固定資産税、広告費などで300万円かかったとしましょう。その場合、必要経費が「700万円+300万円=1,000万円」となり、「家賃収入800万円 – 費用経費1,000万円 = 赤字額-200万円」だと計算できます。
この200万円を損益通算に使えるため、仮に年収が1,000万円の人であれば、「1,000万円(年収)-200万円(損益通算)=800万円」となり、所得金額800万円に対して税額が算出されます。
このように、不動産投資で赤字になった場合、所得税や住民税、法人税の軽減になるため、節税メリットがあるとされているのです。
損益通算による節税が得られるのは不動産投資による利益が「マイナス」になっている場合のみであることに注意しなければなりません。
不動産投資の本来の目的は投資によって利益を得ることです。節税効果ばかりに注目して赤字にしようとすると、本来得られるはずの利益を得られなくなる可能性があります。
不動産評価額による節税
不動産投資は相続税や贈与税の節税効果もあります。
財産を譲り受けるときに発生する相続税や贈与税は、現金として相続するよりも、不動産の形で相続するほうが、税金の負担を抑えられる可能性があるからです。
では、相続税が発生する際、現金と不動産でどのくらい金額差があるのか見ていきましょう。
【相続税のシミュレーション】
・現金で相続する場合
相続税でいくらが課税対象となるのか計算する方法は以下のとおりです。
- 基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
- 課税遺産総額相続税=全ての財産額-基礎控除額
- 相続税額=課税遺産総額 × 法定相続分 × 税率 – 控除額
たとえば、法定相続人が子ども2人の場合、基礎控除額は3,000万円 + 600万 × 2 = 4,200万円となります。仮に1億円を相続する場合、1億円 – 4,200万円 = 5,800万円が課税対象となり、1人あたりの所得金額は2,900万円となります。
3,000万円以下の相続税の計算式は
- 取得金額 × 15% − 50万円
となるため、2,900万円 × 15% − 50万円 = 385万円が1人あたりの相続税となり、さらに、2人分の相続税は385万円 × 2 = 770万円となることがわかります。
・不動産で相続する場合
現金で相続する場合とは異なり、不動産として相続する場合は時価で評価をするため約70〜80%割まで課税対象となる範囲を抑えられます。
たとえば、家屋を買って相続する場合の相続税をシミュレーションしてみましょう。家屋を相続する場合は、固定資産税の評価額が適用されるため、1億円 × 70% = 7,000万円が評価額となります。
先ほどと同様に、相続税を計算していくと以下のとおりとなります。
相続税の課税対象となる金額:7,000万円 − ( 3000万円+600万円 × 2 ) = 2,800万円
1人あたりの相続税:2,800万円 ÷ 2 × 15% − 50万円 = 160万円
2人分の相続税:160万円 × 2 = 320万円
このように、同じ1億円を相続する場合でも、現金で相続するよりも家屋として相続するほうが450万円も相続税を抑えられることがわかります。
また、贈与税についても同様に、不動産で贈与する場合は評価額に基づいて計算されます。そのため、現金よりも不動産で贈与を受けるほうが、贈与税を減らせるでしょう。
というのも、現金は金額そのものが贈与税の課税対象となりますが、不動産の場合は評価額に基づくため、課税対象となる金額が低くなって贈与税の負担が軽くなるのです。
不動産投資における個人と法人の節税効果の違い
不動産投資はサラリーマンが副業として行っているなど、「個人」で投資している方も多いでしょう。しかし、個人で投資を行うよりも「法人」として投資を行うほうが、節税効果を高められるケースがあります。
というのも、個人の所得は累進課税制度により最大税率が55%(所得税最大45%+住民税10%)になることが特徴ですが、一方で法人に適用される税率は低く設定されているためです。
【普通法人の税率】
・年間課税所得が800万円以下の部分:15%(適用除外事業者は19%)
・年間課税所得が800万円超の部分:23.20%
・上記以外の普通法人:23.20%
参照:国税庁「No.5759 法人税の税率」
このように、普通法人の税率は15〜23.2%で計算されるため、一定の所得を超えると、個人で税金を納めるよりも法人化するほうが節税効果を得やすいのです。
ただし、法人化すると会社の設立費用や社会保険料などがかかります。さらに、決算書の作成を税理士に依頼するときなどにもお金がかかるため、個人と法人でかかる税金や経費を比較したうえで判断しましょう。
不動産投資で節税効果を得やすい人の特徴
節税効果を期待して不動産投資を始める方もいるでしょう。ただ、実際は、節税効果を得やすい人と、そうでない人がいます。
ここでは、不動産投資をおこなうことで、節税メリットの恩恵を受けやすい人の特徴を詳しく見ていきましょう。
年収(課税所得)が900万円を超える人
課税所得が900万円を超える人は、不動産投資による節税効果を得やすいといえます。というのも、所得金額によって所得税の税率が変わり、課税所得が900万円を超えると税率が大幅に上がってしまうのです。
課税所得が800万円であれば適用される税率は23%であるのに対し、課税所得が900万円の場合、税率が33%になります。適用される税率が10%も増えてしまうことから、課税所得が900万円を超える人は、不動産投資による節税効果を得やすいといえるでしょう。
なお、課税所得が1,800万円を超えると適用税率が40%にまで上がります。課税所得が多ければ多いほど、不動産による節税効果を期待しやすいでしょう。
確定申告(青色申告)をする人
不動産投資によって節税効果を得るためには、青色申告による確定申告が必要となります。そもそも確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があり、白色申告のほうが一般的な確定申告の方法といえるでしょう。
一方、青色申告は、記帳方法や帳簿の保存期間、必要書類の項目などに一定のルールが設けられており、作成する時間と手間がかかります。白色申告よりも詳細な記入が求められることから、その恩恵として納税額が最大65万円控除されるといったメリットがあります。
つまり、白色申告よりも青色申告で確定申告している人のほうが、不動産投資による節税効果を得やすいといえるでしょう。
不動産投資の節税額の計算方法
節税目的で不動産投資を検討している方は、どれだけ節税効果を受けられるかが気になるでしょう。ここでは、不動産投資における節税額を計算する3つのステップを解説します。
ステップ1:不動産投資による収入を計算する
不動産投資の節税額を計算するときは、まず不動産投資による収入を算出するところから始めます。
具体的な条件を以下のとおり、シミュレーションしてみましょう。
家賃設定 | 15万円 |
年間の不動産収入額 | 180万円 |
間取り | 2LDK |
広さ | 60㎡ |
上記では、家賃を15万円とし、年間の不動産収入額を180万円としています。ただ、礼金や更新料などが発生する年度については、180万円よりも収入額が増えることがあります。それぞれの状況に合わせて計算してください。
ステップ2:不動産投資による経費を計算する
不動産収入額の計算の次は、必要な経費の計算をおこないます。
不動産投資では、主に以下の経費がかかることが想定されます。
【不動産経費】
- 不動産取得税
- 火災保険料
- 地震保険料
- 固定資産税
- 修繕費
- 修繕積立金
- 管理委託にかかる手数料 など
【そのほか】
- 減価償却費
不動産取得税や火災保険料、固定資産税などの不動産にかかる経費に加え、減価償却費も併せて計算しましょう。なお、1か月あたりではなく、1年間の金額で算出することをおすすめします。
具体的な経費については、物件の価格や契約する保険の種類などによって変動しますが、不動産投資の節税額を分かりやすく説明するために、以下の通り具体的な数字をもとに計算します。
不動産経費 | 200万円 |
減価償却費 | 80万円 |
不動産投資にかかる経費(合計) | 280万円 |
ステップ3:不動産投資による所得を計算する
最後に、不動産投資による所得の計算を行います。ステップ1で計算した不動産収入から、ステップ2で算出した不動産経費を差し引くことで、所得を求められます。
不動産収入 | 180万円 |
不動産経費および減価償却費 | 280万円 |
不動産投資の所得 | -100万円 |
不動産投資によって、所得が黒字となっていれば、その所得に対して所得税や住民税が課税されます。また、法人の場合は法人税の算出対象となります。
しかし、今回のように不動産所得がマイナスとなった場合は、損益通算が適用されるため、他の所得から今回の赤字分を差し引くことが可能です。
シミュレーションの例
ここでは、具体的なシミュレーションを見ていきましょう。
不動産収入 | 180万円 |
不動産経費 | 200万円 |
減価償却費 | 80万円 |
不動産所得 | -100万円 |
【給与所得900万円の会社員が不動産投資をしていない場合の所得税】
9,000,000円×33%(所得税率)- 1,536,000円(控除額)=1,434,000円
【給与所得900万円の会社員が不動産投資をしている場合の所得税】
(9,000,000円 – 1,000,000円[不動産投資による赤字分])×23%(所得税率)- 636,000円(控除額)=1,204,000円
不動産投資によって赤字が出ている場合は、損益通算が適用されるため、課税対象となる所得が低くなります。そのため、同じ所得の会社員で比較すると、所得額によるものの、今回のシミュレーションでは約20万円の税負担額に違いが出ています。
なお、節税額については個々の所得によって大きく変わるため、不動産投資を検討している方は、事前にしっかりとシミュレーションすることをおすすめします。
物件による節税効果の違い
節税効果を期待して不動産投資を始めようと思われている方もいるでしょう。ただ、物件によって節税効果に違いがあるため、それぞれの違いや特徴をしっかりと理解しておく必要があります。
ここでは、「木造×築古物件」と「新築区分マンション」に分けて、それぞれの違いを具体的に見ていきます。
節税効果が出やすい:木造×築古物件
物件選びを進める中で、「木造×築古物件」の組み合わせが節税効果を期待しやすいと聞いた経験がある方もいるでしょう。
木造の法定耐用年数は22年とされており、他の構造の物件よりも耐用年数が短く設定されています。そのため、同じ価格および築年数の物件であれば、減価償却費を最大限に引き出すことが可能です。
【計算式】
物件価格 × 償却率=減価償却費/年
耐用年数によって償却率が決められています。後述するシミュレーションでは、国税庁の資料を参考にして、定額法償却率の数字を用いています。
たとえば、シミュレーションで使用する「耐用年数15年・20年」のそれぞれの償却率は以下のとおりです。
耐用年数 | 旧定額法償却率(平成19年3月31日以前の取得) | 定額法償却率(平成19年4月1日以降の取得) |
15年 | 0.066 | 0.067 |
20年 | 0.050 | 0.050 |
※シミュレーションに使う耐用年数のみ抜粋
参考:国税庁「減価償却資産の償却率等表」
【木造】
- 築年数:7年
- 法定耐用年数:22年
- 残りの耐用年数:15年、償却率0.067
2,000万円(物件価格)× 0.067(償却率)=134万円(減価償却費 / 年)
【軽量鉄骨造】(法定耐用年数:27年)※築年数7年
- 築年数:7年
- 法定耐用年数:27年
- 残りの耐用年数:20年、償却率0.050
2,000万円(物件価格)× 0.050(償却率)=100万円(減価償却費 / 年)
このように、同じ物件価格でも、法定年数の違いにより、年間で計上できる減価償却費に約30万円の差がでます。
ただし、築古物件の場合、購入時点ですでに法定耐用年数が切れているということも少なくありません。
法定耐用年数が切れている場合、「規定の法定耐用年数×20%」の年数で償却できることから、木造住宅の場合は4.4年、軽量鉄骨造の場合は5.4年となり、木造住宅のほうが1年間の減価償却費が高くなります。
節税効果が出にくい:新築区分マンション
新築区分マンションの耐用年数は47年であり、1年あたりの減価償却費が非常に少なくなってしまいます。
先ほどと同条件の木造住宅と新築区分マンションで、同じ物件価格の減価償却費を比較してみましょう。
国税庁の資料によると、耐用年数15年の場合と47年の場合の償却率は以下です。
耐用年数 | 旧定額法償却率(平成19年3月31日以前の取得) | 定額法償却率(平成19年4月1日以降の取得) |
15年 | 0.066 | 0.067 |
47年 | 0.022 | 0.022 |
※シミュレーションに使う耐用年数のみ抜粋
参考:国税庁「減価償却資産の償却率等表」
では、定額法償却率を用いて、シミュレーションしてみましょう。
【木造】
- 築年数:7年
- 法定耐用年数:22年
- 残りの耐用年数:15年、償却率0.067
2,000万円(物件価格)× 0.067(償却率)=134万円(減価償却費 / 年)
【新築区分マンション】(法定耐用年数:47年)
- 築年数:新築
- 法定耐用年数:47年
- 残りの耐用年数:47年、償却率0.022
2,000万円(物件価格)×0.022(償却率)=44万円(減価償却費 / 年)
法定耐用年数が長いということは、その分節税効果を長期化できるといった側面もあります。しかし、年間あたりの減価償却費が少なくなってしまうため、短期的な節税効果は期待できません。
節税目的で不動産投資を始めるときの注意点
不動産投資をおこなうことで、所得税や住民税に加え、贈与税などを節税できる可能性があります。しかし、節税目的で不動産投資を始めるときは、いくつか注意しなければならないポイントがあります。
ここでは、どのような点に注意すればいいのか、具体的に見ていきましょう。
節税だけを目的に物件を選ばない
不動産投資を行う際、節税効果ばかりを意識して物件を選ぶのはおすすめしません。
理論上、赤字経営を行えば、損益通算により節税効果を大きくすることが可能です。しかし、赤字経営が続くと、毎年損失が発生するため、投資として考えると損をしていることになります。
もちろん、一時的に赤字になることはあるかもしれません。しかし、無理に赤字にしようと経費を計上したり、あえてニーズのない物件を購入したりすると、本来得られるはずの利益を失ううえに、大きな損失を計上する可能性もあります。
そのため、不動産投資用に物件を選ぶときは、投資用物件として価値があるかどうかを意識しましょう。また、節税効果を期待しつつも、利益を得るには一定額を納税しなければならないといった認識を持つことも大切です。
ほかの節税方法も検討する
不動産投資は節税効果の高い投資方法であることは事実ですが、不動産投資だけでなく、他の節税方法も検討するようにしましょう。
不動産投資だけが節税対策ではありません。さまざまな方法があり、最適な節税対策は人によって異なります。
たとえば、個人型確定拠出年金(通称:iDeCo)を活用することで、掛金の全額が所得控除となることから、大きな節税の恩恵を受けられるでしょう。また、扶養控除や生命保険料控除などでも節税効果を得られます。
不動産投資のリスクについて理解する
不動産投資は、あくまでも投資商品であることから、リスクがまったくないわけではありません。
不動産投資における代表的なリスクとして、「空室による収入減」「ローン返済が困難」「金利上昇」「自然災害」「地価および物価の下落」などが挙げられます。
賃貸物件を所有することで、定期的に家賃収入を見込めることが不動産投資の特徴です。しかし、入居者がいることを前提としているため、仮に空室が続くと、その分家賃収入を得られない期間が続いてしまいます。
たとえば、4室あるうちの1室だけが空室という状態であれば、1室分の家賃収入がなくなります。しかし、4室すべてが空室の場合、家賃収入がゼロとなってしまい、ローン返済がむずかしくなるケースも少なくありません。
そのほか、社会情勢の影響により金利が上昇してしまうと、ローンの総返済額が増えてしまうといったリスクもあります。さらに、地震や火災などで物件が使用できない状況になってしまうと、修繕が完了されるまで家賃収入を確保できないといったリスクがあります。
通常、災害によって発生した損害については火災保険や地震保険でカバーできます。しかし、加入している保険によっては、物件の再建に必要な費用の全額をカバーできないものもあるため、契約内容をきちんと確認しておく必要があります。
出口戦略をイメージしておく
節税目的で不動産投資を始めるときは、出口戦略をしっかりとイメージしておくことが大切です。
不動産投資は、家賃収入や売却益などから利益を得る投資です。しかし、物理的な建物を対象とした投資であることから、建物は経年によって劣化し、定期的な修繕・メンテナンスが必要となります。さらに、社会環境の変化に伴い、入居希望者のニーズが異なる可能性があることから、物件のリフォームが必要になるケースもあるでしょう。
メンテナンスにかかる費用は物件のオーナーの負担となることが一般的です。
このように、不動産投資は出ていくお金も多いことから、節税だけを目的にすると想定外の出費によってキャッシュフローが悪化する可能性があります。
さらに、不動産投資は物件を手放すタイミングも重要です。物件に価値があるうちに売却することで、売却益を期待できる可能性があります。
つまり、物件選びの段階で、中長期的な計画、出口を見据えたうえで始めることが、不動産投資の成功のポイントとなるでしょう。
まとめ
今回は、不動産投資でできる節税方法について解説しました。
不動産投資で損益通算や減価償却などの仕組みを利用することで、住民税や所得税、法人税の節税になります。また、贈与税や相続税の節税につながるケースもあり、うまく活用することで、不動産投資をしない場合と比較して手元に多くのお金を残せます。
ただし、節税だけを目的に不動産投資を行うと、投資として失敗するリスクもあるので注意しましょう。
また、物件のオーナーとなる現物不動産投資は、融資や税金、確定申告のことなどを理解しておく必要があり、投資初心者にとってはやや難易度の高い投資であるといえます。そこで、初心者が始める不動産投資として「不動産クラウドファンディング」がおすすめです。
不動産クラウドファンディングは、事業者が物件の管理・運用を行ってくれるため、出資者は運用期間終了まで待つだけの投資が可能です。さらに、1口1万円といった少額出資が可能なファンドが多く、余剰資金で気軽に始められます。
なお、不動産クラウドファンディングを始めるなら、首都圏の中古物件に特化したエキスパート集団ファミリーコーポレーションが管理・運用する「不動産BANK」がおすすめです。元本の安全性に配慮していることや、手間なく簡単に始められることなどが魅力です。
また、不動産BANKは分配利回り6%以上を期待できたり、無料で会員登録ができたりすることも魅力だといえます。
今回の記事を参考に、不動産投資に興味がある方は不動産クラウドファンディングから投資を始めてみてください。