「不動産クラウドファンディングは節税できる?」 「分配金の仕組みが知りたい」 不動産クラウドファンディングを利用している方や興味を持っている方は、このような疑問を抱えているのではないでしょうか。 不動産クラウドファンディングの税金についてお悩みの方はぜひ参考にご覧ください。
「不動産クラウドファンディングは節税できる?」
「分配金の仕組みが知りたい」
不動産クラウドファンディングを利用している方や興味を持っている方は、このような疑問を抱えているのではないでしょうか。
結論から示すと、不動産クラウドファンディングでは、基本的に節税は難しいといえます。しかし、契約形態によっては節税できるケースもあるため、節税目的で不動産クラウドファンディングを始めるのも選択肢のひとつです。
この記事では、不動産クラウドファンディングにおける税金の仕組みや節税する方法などについて詳しく解説します。確定申告が必要なケースなども紹介するので、不動産クラウドファンディングの税金についてお悩みの方はぜひ参考にご覧ください。
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目次
不動産クラウドファンディングは分配金に税金がかかる
前提として、不動産クラウドファンディングで得た利益には税金が課せられます。まずは、不動産クラウドファンディングの分配金に関する税金の仕組みを詳しく見ていきましょう。
分配金は雑所得となる
一般的に、不動産クラウドファンディングで得た分配金は、雑所得に該当します。そのため、ほかの投資の利益と同様に総合課税の課税対象となることを覚えておきましょう。
つまり、不動産クラウドファンディングでは、出資額に応じて分配金が付与されますが、全額が手元に残るわけではありません。後述するように、源泉徴収により税金が差し引かれたうえで、残額が付与されることになります。
分配金は事前に源泉徴収されている
不動産クラウドファンディングで受け取る分配金は、事業者によってあらかじめ源泉徴収されています。源泉徴収税率は、所得税20%と復興特別所得税0.42%を合わせた20.42%です。所得税は本来、所得額に応じて税率が変動しますが、源泉徴収では便宜上一律の税率が適用されています。たとえば、10万円の運用益が出ている場合、約2万円が源泉徴収されるため、実際に受け取る金額は8万円程度です。
不動産クラウドファンディングの分配金は、源泉徴収により納税は済まされている状態となるため、基本的に所得税の確定申告をおこなう必要はありません。なお、詳しくは後述しますが、一定の条件を満たす場合は確定申告が必要になるため注意が必要です。
不動産クラウドファンディングに節税効果は期待できない
基本的には、不動産クラウドファンディングに節税効果を期待することはできません。不動産クラウドファンディングには、契約形態によって大きく「匿名組合型」と「任意組合型」の2種類に分けられます。任意組合型であれば一定の節税効果を見込めますが、一般的な不動産クラウドファンディングが採用しているのは匿名組合型であるため、節税効果は限定的です。
匿名組合型では不動産ではなく、事業者のプロジェクトに対して出資をおこなうため、投資家に不動産の所有権は存在しません。つまり、誰かに相続できるわけでもないため、現物不動産投資のような相続税の節税効果は期待できないことをまず理解しておきましょう。
任意組合型とは、投資家と事業者が共同で不動産を所有する契約方法です。投資家も不動産を所有することになるため、匿名組合型にはない節税効果を期待できます。任意組合型の節税効果については、次章で詳しく見ていきましょう。
任意組合型であれば高い節税効果が見込める
任意組合型の不動産クラウドファンディングでは、以下のような節税効果が期待できます。
- 相続税の圧縮による節税
- 減価償却費の計上による節税
- 青色申告特別控除の適用による節税
任意組合型のファンドは数自体が少ないですが、節税目的で不動産クラウドファンディングを始めるのであれは、探してみる価値はあるでしょう。
相続税の圧縮による節税
任意組合型の不動産クラウドファンディングを利用すれば、相続税の圧縮による節税効果が期待できます。
任意組合型では投資家も不動産を所有することになるため、特定の人物に対する相続が可能です。そして、相続において不動産の価値は現金よりも低く評価され、課税される税金も抑えられます。たとえば、子どもができて相続を意識するようになったときは、現金を持ち続けるのではなく、任意組合型の不動産クラウドファンディングに投資しておくのもひとつの方法です。そうすれば、課税対象となる財産の価値を意図的に減らし、結果として相続税の負担が抑えられます。
なお、匿名組合型の場合は、そもそも不動産を所有していない状態であるため、相続とは関係ありません。相続税の圧縮は任意組合型の契約により登記がおこなわれ、実際に不動産を所有しているからこそ活用できる節税方法です。
減価償却費の計上による節税
任意組合型の不動産クラウドファンディングなら、減価償却費の計上による節税効果も見込めるでしょう。減価償却費とは、不動産の取得経費を一定の期間で分割して計上する手続きのことを指します。実際の支出が生じていない年でも経費を計上できるため、所得の減額による節税が可能です。
ただし、投資対象が土地の場合は減価償却ができません。一般的に減価償却は、建物を対象とした任意組合型のクラウドファンディングで利用できる節税方法といえます。
また、減価償却ができる期間は限られている点にも注意が必要です。減価償却期間は建物の構造や築年数などによって決められており、木造の物件や中古物件は短くなる傾向があります。減価償却期間が短ければその分、1年あたりの償却金額が大きくなるため、期間が長ければよいというわけではありません。しかし、いずれにせよ一定期間を経過したあとは、減価償却ができなくなり、例年よりも納税額が増えてしまうことを覚えておきましょう。
青色申告特別控除の適用による節税
契約形態が任意組合型の場合、青色申告特別控除を適用することで節税を図れます。青色申告の対象は、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかを得ている人です。任意組合型の不動産クラウドファンディングで得た所得は不動産所得に該当するため、青色申告による最大65万円の控除を受けられます。
【青色申告の控除額と主な適用条件】
申告方法 | 書面・電子申告 | 書面 | 電子申告 |
記帳方法 | 単式簿記 | 複式簿記 | 複式簿記 |
控除額 | 10万円 | 55万円 | 65万円 |
なお、不動産所得の青色申告特別控除を適用するには、青色申告承認申請書を税務署に提出しなければなりません。申告しようとする年の3月15日までに提出する必要があるため、早めに行動しておくことをおすすめします。
匿名組合型の不動産クラウドファンディングで節税する方法
ここでは、匿名組合型の不動産クラウドファンディングで節税する方法を紹介します。主に3つの方法があるので、それぞれ具体的な内容を確認していきましょう。
雑所得内で損益通算する
匿名組合型の不動産クラウドファンディングでも、雑所得内の損益通算によって節税できる可能性はあります。損益通算とは、同一年分の利益と損失を相殺することです。損失を利益から差し引くことで所得を減らし、課税額を抑えられます。
仮に株式投資で30万円の利益が出て、不動産クラウドファンディングで10万円の損失が出ているとしましょう。この場合、30万円から10万円を差し引くことができるため、1年間の利益は20万円になります。つまり、損益通算した10万円分にかかる税金を節税できるわけです。
ただし、損益通算は雑所得同士でのみ認められます。たとえば、不動産クラウドクラウドファンディングの損失を給与所得から差し引くことはできません。
損失を翌年に繰り越す
不動産クラウドファンディングの損失を翌年に繰り越すことでも、一定の節税効果を期待できるでしょう。税法上、損失を翌年以降3年間の利益と相殺できる「繰越控除」と呼ばれる制度が存在します。
たとえば、不動産クラウドファンディングで資産運用をおこない、1年目に300万円の損失が発生し、2~4年目には100万円ずつ利益が出たとしましょう。この場合、1年目は当然利益が出ていないため税金も非課税です。
そして、繰越控除を利用し、300万円の損失を100万円ずつ、3年間繰り越すことで、2~4年目の利益はゼロとなるため税金も発生しなくなります。本来、100万円の利益が出た場合は20万円近くの税金がかかるため、大きな節税効果といえるでしょう。
なお、損失を繰越控除するためには、確定申告が必要です。特に3年間にわたって損失を繰り越す場合、損益が発生していない年があっても確定申告をおこなわなければならないため注意してください。
経費を計上する
経費を適切に計上すれば、匿名組合型の不動産クラウドファンディングでも節税することが可能です。経費は不動産クラウドファンディングによる収入から差し引けるため、その分課税額も抑えられます。
たとえば、不動産クラウドクラウドファンディングのセミナー参加費や書籍購入費など、利益を出すために使った費用は基本的に経費計上が可能です。用途次第では、パソコンの購入費用やインターネット料金なども、経費としてカウントできるかもしれません。
ただし、経費に計上できるのは正当な理由がある場合に限られます。判断に迷うときは税理士に相談するなど、適切な処理を心掛けましょう。
不動産クラウドファンディングで確定申告が必要なケース
不動産クラウドファンディングで確定申告が必要なケースは以下のとおりです。
- 雑所得が20万円を超えている場合
- 課税所得が695万円未満の場合
- もともと確定申告が必要な場合
申告漏れがあると、無申告加算税や延滞税が課せられることもあるため注意しておきましょう。
雑所得が20万円を超えている場合
本業の給与がある会社員の場合、雑所得が20万円を超えると確定申告が必要です。不動産クラウドファンディングをはじめ、投資で得た利益に対しては所得税と住民税が課せられることを覚えておきましょう。
また、投資の利益以外にも、雑所得に該当するものがあります。たとえば、以下のような収入を得ている場合は、合算したうえで20万円を超えているかどうかを判断することが大切です。
- 副業の収入
- 年金収入
- 印税・講演料
- 個人的な貸金に対する利子
雑所得が20万円以下であれば、確定申告をおこなう必要はありません。ただし、住民税に関しては金額の大小を問わず、市役所などで申告手続をおこなってください。自営業者が雑所得を得た場合も、金額に関わらず確定申告時に計上しなければなりません。
なお、確定申告の必要性は、給与収入の金額などによっても異なります。そのため、確定申告をおこなうべきかどうか悩んだときは、税務署で詳細を確認してみてください。
課税所得が695万円未満の場合
勤め先からの給与や不動産クラウドファンディングの分配金などを含め、課税所得の合計が695万円未満の場合は、確定申告により払いすぎた税金を取り戻せるかもしれません。
一般的な匿名組合型の不動産クラウドファンディングで受け取る分配金は、一律20.42%が源泉徴収されています。しかし、所得税率は所得金額によって変動する累進課税の仕組みがとられており、695万円未満なら高くても20%です。本来適用されるべき税率が源泉徴収税率よりも低い場合は、確定申告によって払い過ぎた税金を還付してもらえます。
以下は、国税庁が公開している年間の課税所得に対する税率です。
年間の課税所得 | 税率 | 控除額 |
1,000円~1,940,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円~ | 45% | 4,796,000円 |
(参照:国税庁「所得税の税率」)
一般的な不動産クラウドファンディングでの節税は難しいものの、過払いの税金を取り戻せる可能性は十分あるため、自身の課税所得と所得税率を適切に把握しておくことが大切です。
もともと確定申告が必要な場合
もともと確定申告が必要な場合も、不動産クラウドファンディングで得た利益を計上しなければなりません。具体的には、以下のような方が該当します。
- 個人事業主
- 青色申告をおこなう方
- 年収2,000万円以上の会社員
- ふるさと納税や医療費控除を受ける方
これらに該当する場合は、分配金の額とは関係なく確定申請が必要です。
不動産クラウドファンディングの確定申告をおこなう際の手順
最後に、不動産クラウドファンディングで確定申告する流れを確認しましょう。
- 所得額を確認する
- 必要書類を準備する
- 確定申告書を作成する
- 税務署へ提出する
- 納税・返還
確定申告を怠ると、ペナルティを受けて余計な税金を支払うことにもなりかねません。期限までに必ず手続きを済ませましょう。
手順①:所得額を確認する
まずは、1月1日~12月31日までの所得を計算しましょう。確定申告をおこなう必要があるのは、給与所得以外で20万円超の所得がある場合、総所得金額が695万円未満の場合などです。自身が該当するかどうかを判断するためにも、1年間の所得を把握することから始めなければなりません。
給与所得は勤め先からの源泉徴収票、分配金は運営事業者からの報告書や支払調書などで確認できます。不動産クラウドファンディング以外にも所得がある場合は、忘れずに合算してください。
確定申告の期間は、例年2月16日~3月15日です。期限を過ぎてしまうと余計な税金が加算される可能性もあるため、早めの着手を心がけましょう。
手順②:必要書類を準備する
次に、確定申告書の作成に使用する書類を準備します。必要な書類は申告内容によって異なりますが、主には以下の書類を用意しておくとよいでしょう。
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード など)
- 給与所得・公的年金等の源泉徴収票(原本)
- 各種控除に必要な書類(医療費の領収書・生命保険料控除証明書 など)
- 不動産クラウドファンディングの支払調書
上記の書類をもとに、確定申告書の記入欄を埋めていきます。紛失している場合などは再発行に時間がかかることもあります。所得の計算と並行して必要書類を集めておきましょう。
手順③:確定申告書を作成する
最後に確定申告書を作成し、税務署に提出します。所得を計算し、上述の書類を集めた状態であれば、必要項目をスムーズに埋められるはずです。
紙媒体で作成する場合は、最寄りの税務署や国税庁のホームページで様式を入手できます。パソコンやスマートフォンで作成する場合は、国税庁が提供している「確定申告書等作成コーナー」を利用してみてください。画面の案内に従って必要事項を入力すれば、確定申告書が完成します。
ただし、確定申告書等作成コーナーを利用するには、マイナンバーカードで利用者識別番号を取得しなければなりません。マイナンバーカードがない場合は、税務署で専用のIDを発行してもらう必要があるため注意してください。
手順④:税務署へ提出する
確定申告書を作成したら税務署へ提出します。提出方法は、以下のいずれかから選択してください。
- 税務署に持参
- 郵送
- e-Taxによる電子申告
はじめて確定申告をおこなう場合は、手間はかかりますが持参するのもよいでしょう。その場で誤りを指摘してもらい、修正できることがあります。
確定申告に慣れている場合は、e-Taxでの提出がおすすめです。自宅で手続きできるうえ、書面提出に比べて早く還付金を受け取れます。
手順⑤:納税・返還
確定申告書の提出が完了したら、納税手続きをおこないましょう。納税期限は原則3月15日です。期間を過ぎるとペナルティを受ける場合があるため、計画的に進めることが大切です。
納税方法には、以下の4つがあげられます。
- 現金納付
- 銀行振込・口座振替
- クレジットカード払い
- 電子マネー決済
なお、口座振替で納税する場合、引き落としは4月下旬ごろになります。そのため、納税までの期間を少しでも長く確保したい場合などは、口座振替をうまく活用してみてください。
また、税金を多く払っていた場合は後日、還付金として返還されます。返還までの期間は、確定申告書の提出後、1か月から2か月程度を目安にしておきましょう。電子申告の場合は期間が短縮され、2~3週間程度で返還されます。
まとめ
不動産クラウドファンディングには、「匿名組合型」と「任意組合型」の2種類の契約方法があり、任意組合型で契約した場合は相続税の圧縮や減価償却費の計上などによる節税効果を期待できます。しかし、不動産クラウドファンディングの多くの事業者は、匿名組合型を採用しているのが実情です。そのため、不動産クラウドファンディングにおいて、節税は基本的に難しいものと考えておきましょう。
とはいえ、匿名組合型の不動産クラウドファンディングでも節税につなげられるケースはあります。損益通算や繰越控除の制度を活用したり、経費を計上したりすれば一定の節税効果を見込めるはずです。
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